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りそうのせかい改

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あたしが持っていない、ごく普通の体験と思い出

今までの人生に悔いはないし、自分の人生をツマラナイと思ったこともない。
ましてや、自分のことを不幸せだとも思っていない。

けど。

あたしは世間一般の人が体験してきたであろう、ちいさな、くだらない、普通の思い出を、あまり持っていない。

喩えば、家族で食事をすること。
初詣や七五三、運動会、外食、テーマパーク、旅行、お出かけ。
家族で過ごした行事は、ひとつもない。

海水浴、キャンプ、卒業旅行や友人との旅行、合コン、ビアガーデン。
抱擁、頭を撫でられること、手を繋ぐこと。
誰かのいちばんになること。
恋人付き合い、愛あるセックス、家族の団欒。
これらは、体験したことがないもの。


今より、何かを求めることは、贅沢ですか。
もう、体験できないことも多い。
過ぎ去ってしまった時は、戻ってこないから。

自分の、家族が欲しかった。
血の繋がりなんてなくっていいから。
あたしを愛してくれているという確信が持てる、あたしだけの大人が欲しかった。
あたしをこの世でいちばんにしてくれる、子供が欲しかった。

感情は、何でつなぎとめればいいの?
気心の知れた「誰か」が、どれかひとつでも、一緒に体験してくれればいいのに。


いまのあたしが手に入れているものは、
ぐらぐらと揺らぐ不安定な正社員という肩書きと、
そこに働く学生ノリの愉快な仲間たちと、
意味のない紙っ切れの国家資格と、
洗面所無し、外置き洗濯場の文化住宅アパートくらい。

これで、じゅうぶんでしょ。
これで、じゅうぶんでしょ。

ひとは、無い物ねだりが得意だから。
ひとは、贅沢な生き物だから。
今以上に何かをほしがる。


奇跡なんて、この世には無いから。
──愛される日がいつか来るなんて思わない。

楽しい日々は、もう戻ってこないから。
──会社が無くなってしまったという事実は消えない。

いまを堅実に生きろ。
そうすれば、これ以上は手に入らなくても、これ以下に下がることを食い止めることは出来るかもしれない。

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