忍者ブログ
現場仕事と仲間のこととか、たまにイデオロギー的なことをつれづれに。 読んだ本、すきな音楽やライブのことだとか。 脈絡無く戯言を書き殴る為の、徒然草。

凶悪事件のルポルタージュ、3冊。「死刑でいいです」

ここ2週間ほどで読んだ本の記録です。まずは1冊目。

先月読んだ「刑務所の経済学」の参考文献に載っていたため興味を持った「死刑でいいです」を手に取った皮切りに、若者の凶悪犯罪のルポに興味が出て立て続けに3冊読みました。
最初、読み始めた動機は兼ねてより将来やってみたいと思っていた保護司の情報を集めたかったからですが、犯罪者の心理・・・とまで行かなくても、何故事件を起こすことになったのか、の軌跡を知ることは勉強になったと後から思います。




死刑でいいです―孤立が生んだ二つの殺人 (新潮文庫)
池谷 孝司   (著)
2005年、大阪で若い姉妹が惨殺された。犯人の山地悠起夫はその5年前、実母を殺し、少年院で矯正教育を受けていた――。山地は裁判で「さっさと死刑にしてくれ」と主張。09年、一切の真相を語ることも、反省することもなく絞首刑となった。享年25。その短い人生でなぜ3人も殺めたのか。彼は化け物か、それとも……。緻密な取材で事件の深層と凶悪犯の素顔に迫る、衝撃のルポルタージュ。

本を手にして、すぐに気付いた。この事件は、よく覚えている。
事件があった2005年、わたしは大阪で幼馴染の友人と2人でルームシェアをしていた。住んでいたのは、風呂は古いタイル張りに風呂桶という、ボロアパートの1階。
変わった人が多く住むコーポで、玄関扉が壊されたり、割れた窓ガラスが散乱しているなんて、よくある出来事だった。
事件は、そんな年に起こった。場所は同じ大阪府内。被害者は同年代の一緒に住んでい居た女性2人。自分たちと似通った状況だったため、ニュースで聞いたときは戦慄した。
しかも、まだ犯人は捕まっていないその翌日に、私の同居人はカギを掛け忘れて出勤し、先に帰宅した私は空いたままの玄関に散乱した部屋の有様を見て真に怯えたのだ。(もちろん帰宅した相方に説教したのは言うまでもない・・・)
この事件をきっかけに、わたしも日頃の防災意識を高め、自宅の玄関扉を開ける時には後ろを振り向いて、誰も付いて来ていないことを確認し、忍者のように素早く家の中に入ってカギを掛ける前にロックをし、それからカギを掛ける様になった。この習慣は、10年間続いている。
(被害者は、帰宅時に玄関のドアを開けた瞬間に押し入られ、すぐに切りつけられている。)

そんな事件のルポ。
犯人が私たちの同年代だったことは、当時のニュースで記憶していたが、その背景や判決を受けたその後、死刑が執行されていたことも、この本で知った。

まず、読後いちばんに思ったことは、犯人の25年間の人生が、見事に救われないものだったこと。
もちろん、いちばんの被害者は何の接点も関わりも無かったのに殺された被害者の姉妹の方々で、その点においての犯人への同情などは皆無なのは確かだけれど。
このひとの人生は、ほんとうに、非常に、やるせない。
父のアル中に家庭内暴力、母のネグレストと夫を見殺しにする姿を見せつけられ小学生で父を看取り、葬儀では誰も悲しんで貰えない。更に、水道を止められるほどの貧困、母の借金癖と男の影、学校でのいじめ、就職の失敗、初体験の相手には別の男が本命に居る始末。
ほんとうに、絵に描いたような、散々な思春期を送っている。
それでも中卒で真面目に働き、家計を助け、彼は頑張っていた。
なのに、それに追い打ちを掛けてたのは、母の存在。苦しい生活の中息子に内緒で借金を増やし、男の影はチラつかせるし、挙句息子の財布から定期的に金をくすね、しまいに彼女との交際に妨害を図る。これで元凶の母親に殺意を覚えない人間の方が少ないだろう。
はっきり言って、この環境で生まれ育って、1つ目の殺人(実母殺害)はある意味どうしようも無かったとも思える。
問題点は、その後の対応。少年院に入った後の更生教育や出所後の支援など、もっとなんとかならなかったのかということ。
幸か不幸か、出所後、身元引受人のいない山地を家庭内に迎えてくれた父の友人宅では、一時期人並みな生活をしている。父の友人、妻、幼い娘、そして彼の4人で生活しているのだ。
幼い娘である子供にも慕われてたということは、この時はきっと彼にとってもいい環境だったに違いないのに、父の友人が紹介した仕事が何でゴト師だったのか。何で、元犯罪者に、犯罪組織に最も近いような職場を紹介してしまったのか。まっとうに生きようとしている少年を、犯罪組織に売り渡してしまったのか。
これが一番の転落のきっかけに思えました。

何で、もっと周りの人は彼に対して誠実に接してくれなかったのだろう、と悔やまれる。
母が、もう少しでも愛情のカケラを見せてくれていたなら。
初恋の相手が、浮気なんかじゃなくて彼だけを見ていてくれたなら。
その2点だけでも救いがあれば、彼はきっと母親を殺さなかっただろうと、思うのです。
そうすれば、後の残虐な姉妹殺傷事件も無かったと思うのです。

個人的な意見を言うと、反省が判らないのならしなくてもいいから、自分自身をもう少しでも大切に思える気持ちを持って居れば、2つ目の事件は防げた気がします。
だって、自分が大切なら、後先考えないような事件は起こさないと思うから。
誰かが彼を大切に思って、その思ってた人の気持ちが、署名運動のような文章化した形じゃなくて、彼に寄り添ってくれた担当弁護士のように、仕事などの関わりの無い立場の人からアプローチがあれば、長い時間がかかってもこころが動いたかもしれない。

この事件の犯人のような、救われない人生を送るこどもがこれ以上増えないように、現代社会に生きる私たちに少しでも出来ることは無いか?と強く思えるルポ本でした。

拍手

PR