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現場仕事と仲間のこととか、たまにイデオロギー的なことをつれづれに。 読んだ本、すきな音楽やライブのことだとか。 脈絡無く戯言を書き殴る為の、徒然草。

ミンドゥルレ (息抜きリハビリな青春小説)

ちょっと久々に、青春小説が書きたくなりました。
生ぬるい日常のハナシじゃなくって、毒のあるヤツを。

ということで、書いてみたいと思います。文章リハビリ兼ねて。勢いで。(またかよ!)
勢いとはいっても、ネタはサワムラの中では10年以上前からあるおなじみのキャラクターとネタを使って。

ということで、タイトルは ↓


 
 ミンドゥルレ

 
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舞台は90年代の大阪。の、端くれの裏路地。
主人公は家出少年たちの溜まり場・林部屋に住まう、まだ義務教育も終えていない年頃の少年たち。
彼らの日常にあるのは、暴力と犯罪と金とセックス。

あったかいご飯。おかえりの声。ペンを持ち、机に向かって勉強する。

これは、そんなありふれた日常に憧れてるけど手に入れることが出来ないボンクラどもの、切ない青春物語。

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【本編】
 
 
第1話 エンドウ タダシ
 小柄でいつもニコニコ笑顔。林部屋では最古参のみんなのマスコットキャラクター的存在な14歳。

第2話 シャケ
 自称レッドドラゴンの通り名を持つ洞成中の喧嘩番長。酷い吃音症のくせにお喋りな15歳。

第3話 パク イルソン
 裏で顔が広く怪しい商売に手を出す林部屋の稼ぎ頭。誰とも馴れ合わず常に上から目線な15歳。

第4話 アケミ
 子沢山な中年やもめと4年前に結婚した円藤家の母。実年齢よりだいぶしっかり者の25歳。

第5話 シュ ヨシチカ
 巷で喧嘩屋と呼ばれる新参者。無口で不器用、暴力でしか自分を表現できない15歳。


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【プロローグ】


 毎日生きることに思考を寄越しもせず机に向かってるだけで存在意義を果たしてる奴らに云ってやりたい。それは贅沢すぎる仕合わせなんだってことを。
 ここには何もない。あったかい飯も、おかえりの声も、疲れを癒す布団も、教科書もペンもノートも制服も、小煩いオヤも、シガラミも、働く権利も、自由も、金も。
 何もないってのは、そういうことだ。好き勝手生きてることをジユウだと主張するひとがいるが、違う。何もないところに自由は生まれない。自由ってのは、金で買うものだ。当たり前に手に入れてる人間は、それに気づかないみたいだけど。
 円藤忠に会ったのは、ちょうど俺がそれに気付いた時だった。
 この町に来て、最初に喋った人間もエンドウだった。
 こんな風に袋小路の路地裏で、学ラン姿の奴らに取り囲まれてて、傍で二、三人伸びてて。あの時は何て声掛けられたんだっけ。確かそう、こんな感じで後ろの塀からひょこっと顔を出して
「おーおー、派手にやってるねぇ」
 って。今みたいに。
「加勢しよっか、」
「いい」
「云うと思った」
 エンドウはにこっと笑う。いつも通りに。そのまま塀をよじ登り、胡坐をかく。
「阿呆やな、お前は。加勢してもらえばいいものを」
 ニヤケ顔の学ランが云った。どっと笑いが巻き起こる。何が可笑しいのやら。俺から見れば、拳ひとつの小柄な男一人相手に、大勢で周り囲ってるこいつらの方がよっぽど可笑しい。
「勘違いすんな。これは俺が受けた喧嘩や」
 云って左ストレートを打ち込む。左、左、右と見せかけてまた左。
「ふーん、結構やるやん。そんなチビ、居てもいなくても同じってか、」
 ニヤケ顔は俺じゃなくって高みの見物を決め込んでるエンドウに云っている。挑発したら降りてくるとでも思ってるらしい。エンドウは眉ひとつ動かさない。そのままの笑顔で律儀に 答える。
「そおかもねぇ。おれ別に、喧嘩強くないし」
 チビ、って言葉に乗せられるとでも思ったんだろう。でもそんな言葉、エンドウは云われ慣れてるし、いちいち反応しない。否、どんな煽り文句にも反応しない。
 と、朱い影が過ぎる。同時に立て続けに入る鈍い音。イチ、ニー、サン、シー。
「おい、何だ、てめーはっ」
「おめーはごごごごちゃごちゃ、ううっせぇっ」
 キレイに抜けた真っ赤な赤髪の男は、握った両手を重ねて頭上に振り下ろす。ひょろ長い体躯は軽々と動き、着崩した制服は群れる学ランどもの間をすり抜けるように舞う。シャケだ。ひゃっほぅ、とでもいいたげな奇声。そんでもって俺に、なななにやってんだだ、おおめーはまたひひ、とりで。て投げる。
「何だぁ、コイツ。何て云ってんだ、」
 最初は俺も聞き取れなかった。でもだんだん、慣れてきた。何云ってるか分かるようになってきたんじゃなくって、聞き流すことに慣れてきたんだな。だってシャケは、無駄なお喋りが多い。
「あれだ。この喋り方に髪色、こいつ、洞成中のレッドドラゴンや」
「ドーモ」
 満足げにシャケが笑う。で、一発。キレがいい。名が売れてることが機嫌を良くしたらしい。
「おめーも組んでたんかよ」
「ちちげーよ。淀トンには、かか、か借りがあんだろ」
 また喋りながら打つ。今度は膝蹴りだ。器用な奴。
 シャケは酷い吃音の癖にそんなことはお構いなくべらべら喋る。たぶん、普通の野郎よりよっぽどお喋りだし、本人もそのことを気にしている様子はない。目立つ髪色、独特の言い回し。この特徴が、ヤツを巷の悪ガキどもの間で有名にしている要因の一つなのかもしんない。勿論、バカみたいに喧嘩好きで、それなりに強いってことも。俺にとっては喧嘩は仕事でも、こいつらにとっちゃ遊びなんだから、テンションの違いは仕方ない。
 正直、不本意だったがシャケの加勢で事は早く片付いた。ざっと数えて十三、四人ってとこか。シャケの云うように、確かにひとりじゃ体力が持たない。
 ストン、とエンドウが塀から飛び降りた。傍にしゃがみ込み、伸びてる野郎の懐に手を入れる。
「なんや、セッターかいな」
「あ。おお俺、欲しい」
 少し崩れた煙草のパッケージをシャケに投げて、エンドウは手癖の悪さをそのまま続ける。横の野郎から盗ったライハイに火を点けて、吸い込む。その隣の野郎の財布からは、夏目サンが四人。
「上々、」
「ま、こんなもんでしょ」
 無表情の笑顔でヤツは答える。呆れ顔のシャケは煙を吐き出しながらエンドウを見る。わざとらしく溜め息を吐く。背は、明らかにシャケの方が高いんだけど、上目使いに見上げる。
「お、お前。ほ、ホンマはほほほ欲しいモンとか、なな、い、やろ」
 確かに。云われてみれば、そんな気がする。
 百五十センチあるかないかの小柄な体系に、まん丸い目を持つアイドル顔。その顔で、絶やすことのないにっこり笑顔。一見、この風体からは結びつかない手癖の悪さ。そして手癖こそ悪いがそこに悪気なんてものは全くなく、息をするみたいに人のものを掏る。エンドウを見てると、その行動には欲求なんてものは全然見えない。
「そんなことねぇよ」
 にかっと笑って、ヤツは煙を吐き出した。ホントかよ、と云いたくなるような胡散臭い笑顔。
 じゃ、なな何だよ。と問うシャケに、エンドウは云う。
「せやなぁ。強いて云うなら、カナシミかな」
 なんや、それ。
 「わわけ、判らん」
 ペッ、と砂利混じりの唾を吐き捨て、一緒に吸殻も捨てた。汚れたスニーカーの裏で踏み潰す。エンドウは笑うだけで何も云わない。まるで、判んなくてもいーの。とでも云ってるみたいだ。 
 欲しいものか。とふと考える。金か。住む場所か。それとも正当な理由の付く仕事か。どれも今必要なものではあるが、どれも違う気がする。そうだ、喩えば。もし。
 いや。 
 もしも談義は意味がない。ifなんて世界は存在しないから。
 でももし。もしも、生まれ変われたなら。
 俺は、



(第1話へ つづく)

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