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りそうのせかい改

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人にやさしくすると、穏やかな気持ちになれる。

社内審査、半月前を切りました。
今から勉強始めて間に合うのか? 否。そんな付け焼刃の知識なんて無いも同然でしょ・・・。
こういうの、なんていうか知ってますよ。
そう、悪あがきって言うんです。


7月入ってもう夏なイメージなのに、まだ梅雨が明けてないので私的には気分向上中です。
しとしとと降る雨の中、長靴を履いて出かけるもよし、また家の中で静かに過ごすもよし。
風流さ? 侘びさび的精神? それもあるけど何よりもいいのは少し涼しくなること!
あと、いつもより周りが静かに感じる。(たぶん実際に外で遊ぶ子供とかいないし・・・)
そして、紫外線が弱まってる気がする!!

暑いの超苦手で、おまけに紫外線アレルギー持ってるから(軽度だけど)カンカン照りの日に外出るなんてありえません・・・。



そんな雨の日はもちろんそうですが、最近は穏やかでやさしい気持ちです。
 毎日自炊して、こまめに掃除して、日々をキチンと生きてる気がします。
先日は半年間もご無沙汰してたジムにも行ってきたし。健康にも多少気を使ってる感じ。

水面下の激しい気持ちに振り回された6月を経ていまがあるなら、とってもいい時間をすごせました。
自分の感情の、いろいろなことにきちんと向き合えた一ヶ月。

・・・思い返せば、7年前も、4年前も、2年前も、今も、私の恋の季節は6月でした。
それも、ぜんぶ6月下旬。
これって偶然? それとも必然??
どれもいわゆる「いい結果」ではないけれど、どれも私にとっては穏やかな気持ちを取り戻せた日です。




キミがくれたものは、形には出来ないけれど、また一歩私を成長させてくれましたよ。
たぶんキミにも成長できる何かがあったはず。
そばにいて、成長できる何かがあって、尊敬できる何かを持っていて、こころを裸にしても苦痛じゃない相手と出会えたことは、何よりの財産。
恋なんて幻想が手に入らなくても、キミに出会えてよかった。

相手の気持ちを想像すること。汲み取って、望む言葉を選んであげること。
喩えそれがちいさな出来事であっても、勇気を出してくれた行動にやさしい言葉で返せば、思いやりが包まれた返事が返ってくること。




考え方ひとつ、選ぶ言葉のひとつ、行動ひとつでこんなに世界が変わって見えるんなら、多少無理矢理なポジティブシンキングができることはいい特技だと思います。

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不誠実な誠実と、気まぐれ迷い猫

深夜二十三時半を回った頃。
 呼び鈴が鳴って玄関のドアを開けると、シロがいた。
「どーしたん?」
「・・・近所、通ったから。」
 どことなく気まずそうに、少し離れて立っている彼に蛇目さんは、まぁ上がりーや。と言って奥へはけた。



 おずおずと背を丸めて上がった割りに、シロは我が物顔でソファーに寝転びスマートフォンを弄りだす。そんな彼を気にした様子もなく蛇目さんは「ジャスミン茶でいい?」と言って戸棚からガラスのコップをふたつ取り出す。
「仕事帰り?」
「もちろんです。あ、でもさっきまで友達と飲んでたんですよ。ほら、こないだの」
「あー、クロくんだっけ?」
「そう。彼。」
「仲いいねー。ハイ、お茶。」
「あ、ドウモ。」
 態度は横暴だけれど、言葉はいちいち謙虚なところが面白いな、と蛇目さんは内心思う。そしてソファーからいちばん離れた位置に座布団を置いてちょこん、と座りコップに口をつける。
 他愛ない雑談。今日あった事、職場の先輩の話、最近ハマってる音楽のこと。
 ぽつぽつとだけど、途切れないように意識して喋っているみたいにふたりは言葉を紡ぐ。中身のない会話。やがて、待ってましたとばかりに沈黙が訪れた。
「・・・何か、喋ってや」
 痺れを切らしたように蛇目さんが言った。
「喋ってますやん!そっちこそ喋ってぇや!」
「──だったら言うけど。あんた、何しに来たん?」
 こんな夜中に。という意味ではないことは、シロも解っていた。蛇目さんは、さっきから話題に出さないように避けている、あの事を言っているのだ。
「蛇目サンに、会いに来たんですよ。・・・メール、貰ったから。」
「フーン・・・」
 今日、二十日ぶりに蛇目さんから連絡が来た。それも、信じられないくらい長い長文で、赤裸々に自分の気持ちを綴った文章が。勝手に連絡を絶っておいて、もう連絡してくんな、とまで言っておいて、今度は反省と後悔の文。挙句の果てに、もう一度出会ったとこからやり直したい、ときたもんだ。
 そこまで書いておいて、当の蛇目さん本人は薄い声で相槌とも取れない返答をしただけ。
「フーン、じゃないでしょ?! てか何やねん、あのメール!! ちょいちょい重いねん!!」
「はぁ?! どこが?!!! 超正直に気持ち書いてるだけやんっ!」
「蛇目さんってさぁ・・・!」
 言いかけて、言葉を飲み込む。
 この疑問を口にしてしまえば、何かが変わってしまうかもしれない。いや、何かは絶対に変わってしまう。それが、いい方に転ぶか、悪い方に転ぶか。蓋を開けてみないと、自分でも予想がつかない。
 そう、思ったけれど。シロは、意を決したように言った。
「・・・僕と、付き合いたいって思ってるでしょ。」
 視線がぶつかる。
 蛇目さんの表情には特に変化がなく、感情が読み取れない。シロは、出来るだけ、感情の篭らない眸を作った。さぁ、なんて答える? どっちに転ぶ? 考えうる回答のパターンを思い描いて、喉元に返答を準備する。
 暫しの沈黙のあと。蛇目さんが、口を開く。
「いや、まったく。」
  拍子抜けした。
 意を決したセリフは、宙に宙ぶらりんだ。シロは顔を上げた。蛇目さんは特にこれといった感情もないような、平然とした表情をしていた。
「そ、そーなの?」
「だっていま特に恋人欲しくないし。結婚願望もないし。年齢的に、いま恋人作ったら結婚について考えんとあかんくなるやん。そーゆう煩わしいのキライ」
 三十路超えの女の口から飛び出たとは思えないような、いい加減な発想。予想の遥か斜め上を行く回答に、シロは面食らって思うように口も動かなかった。
「自由人、なんですね・・・」
「それを言うなら、あんたもやろ!」
「まぁ、そうか。僕も付き合うつもりやったわけやないから、それならええねん」
  それならええねん。心の中で反芻する。それならええねん。
 蛇目さんは憑きもんが降りたようなさっぱりした顔で喋りだす。
「あんたに恋愛感情なかったなら安心したわ。うちかてあの日、ジブンのことめっちゃ傷付けてしもた思って焦ったからな」
「・・・なんか重たい文章のメール来たから告白られたらどーしようか思って。それで断ったらまたギクシャクするん嫌やったし・・・」
「ま、付き合う付き合わへんは置いといて。お前がうちのこと好きなんは分かったから、それでええやん」
「何ですか、それ。えらい自信ですね。」
 シロは嫌味のつもりで言った。けど、蛇目さんはにこにこ、いや、むしろ、ニヤニヤ笑っている。
 何でこの人はへこたれないのだ。これだけ、心無い言葉をぶつけているというのに。
 蛇目さんはそのニヤニヤの表情でシロに向かって言った。
「だって自分、今日メール見てすぐ家来たやん。うちと仲直りしたかったんやろ?」
 自信に溢れた目で見つめられると、ノーとは言えなくなってしまった。
 実際シロは、二週間以上の音信不通の間もやもやしていた。偶然テレビで映し出された蛇目さんの職場のレポート番組を見た。隣町の行きつけの店に行ったとき、彼女の通っていると言っていたジムを覗いたこともあった。忘れていたわけではなかった。いや。むしろ、ずっと気になっていた。
「まぁ、そーですね」
「それと同じくらい、うちもシロのことは好きやで」
「恋愛感情やなくて?」
「今はね。恋愛感情が芽生えたらまた言うわ。うちは何でも正直にぶちまけるタイプやから。最初からそうやったやろ?」
 言われてみれば、そうだったかもしれない。
 最初から、蛇目さんは自分の思ったことはなんでも口にしていた。でも、あの時、その言葉の意味をそのまま捉えられなくて、何かきっと裏にウラハラな感情を隠しているんだ、と思っていた。
「あれにも裏なんかなかったんや・・・。なんや、深読みして損した・・・」
 一気に気が緩んだ。
 でも笑う気になれないのは、恋という感情を向けられていなかったことが、案外ショックだったのかもしれない。我ながら自分勝手だな、と思う。自分だって、愛の告白を受けた場合の選択肢はお断りコースだった癖に。
「最近、昔の曲聴くのにハマってるんですよ。なんか聴きませんか?」
 シロはiPodのイヤホンを抜いて、アルバムタイトルをめくった。
「じゃあオススメの曲聴かして。うち、ミュージックポット持ってるんよ」
 言いながら蛇目さんは立ち上がり、棚の上のマグカップ型スピーカーに手を伸ばす。少し背伸びした拍子に、ふわりとしたミニスカートの裾から白っぽい布が視界を掠める。シロは、そんな些細なことですぐ反応してしまう自分の身体を恨んだ。
 受け取ったスピーカーにiPodをセットする。少しざらついた音で、90年代のコアロックが流れ始める。
「白? 可愛い下着つけてますね」
 邪な気持ちが過ぎったことなんて、彼女が振り返ったらどうせバレてしまうんだ。だったら隠したって無駄だとシロは開き直った。
「違うよー。ホラ」
 蛇目さんは襟首をめくって見せた。少しだけ胸元がはだけて、水色に淡いピンクのレースがついたブラジャーが覗く。蛇目さんはそれを、天気の話でもするかのような自然な流れでしたのだから敵わない。手を伸ばせばすぐ届く距離に彼女はいるのに、いまは絶対に手に入らないものがある。
「コラ、」
 伸ばした手はぴしゃりと払われてしまった。
「えぇやん。おっぱいだけやから。触らしてぇや」
「何でやねんっ。ハイ、て言うと思ったんか?!」
「いやぁ、今日は甘えさしてくれるかなぁ思ったから。じゃあなんか言うこと聞きますよ。僕にして欲しいことありませんか?」
「してほしいこと? なんでもいいの?」
「はい」
「じゃあ、セックスかな。」
 また予想のはるか斜め上をいく回答に絶句してしまう。
「いや・・・それはあの・・今日は準備が万全じゃありませんので・・・」
「? 準備って何やねん。お前は女子か」
「ゴム持ってませんので!」
「あー、そういうことね。残念~」
 本当に残念になんて思ってないくせに。
 蛇目さんの言葉はぜんぶ真実だというけれど、ぜんぶが嘘くさい。からかわれているように思ってしまう。だって、声に感情がぜんぜん乗ってない気がするから。
「・・・喩えばもし、セックスしてしまったら、僕らはどうなるんですか。」
 いま。本当にする気はないけれど、このひとと一緒にいたらいつかきっとしてしまう気がする。だって自分は中学生並みのエロガキな下半身の持ち主だし、彼女はそれを特に否定もしない。
「別に、どうもならんのじゃない? その行為自体に意味なんて持たせる必要はないやろ。身体を重ねた後に心情が変化することはあるかもしれんけど」
「心情の変化って、どう変化するんですか」
「そんなこと、その時になって見ぃひんと判らへんよ。変わらへんかもしれんし、あんたのこと好きになるかもしれんし」
「僕は、そうはなりませんよ。絶対」
 恐かった。そうなったとき、いまの軽口叩ける関係が崩れてしまうのが。蛇目さんとの縁が、切れてしまうのが。
「そうしたら、その時にまた考えればええやん。お互いええ年した大人なんやから、そのへん分かってるなら、したらええと思うよ」
 だから嫌なんですよ。その時、が来てしまったら、もう元には戻れなくなってしまうんでしょ。シロはそう言いたかったが、止めておいた。自分が、手を出さなければ済む話だ。たぶん、蛇目さんは自らシロを誘惑してくることは有り得ない。だって、恋人関係を結んでいないんだから。
 ぶっ飛んだ意見を言う人だけれど、そういうところは妙に誠実を守るひとなのをシロは知っていた。
「・・・判りました。じゃあとりあえず、おっぱい触らしてくださいよ。僕の触っていいですから」
「ぜったい嫌。うちは別に触りたくないし」
「ちょっとだけ。先っちょだけでいいから」
「あんた、ただのスケベオヤジやな」
「・・・そんな僕が作る作品を、あなたは好きなんですよ」
 出会ったとき、アーティスト・寅雄の作品を蛇目さんは好きだと言った。決して上手ではないけれど、あたしの心には響いたし、こういう毛色の作品は元々好きなジャンルなんだ、と言ってくれた。
 蛇目さんは相変わらずケロっとした顔で答える。
「あたしの中で寅雄くんとシロは別人やから。ちゃんと分けて考えてるから大丈夫。」
「ほんならシロはただの変態やんっ!」
「そーいうことになるな」
「・・・あなたが、女性だったのが悪いんですよ」
「そんなこと、うちかてずっと思ってたわ。同性やったら、良かったのにね」
 ミュージックマグからは最近エンドレスで聞いているロックが流れていた。
 その唄は、時の流れの早さと短い時間の大切さを唄っていた。

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18分の3

「突然ですが、結婚しましたー」

登録してないアドレスからのメール。
誰。
イタズラ? いや、でも待てよ。このアドレス、見覚えが・・・

「お前・・・アサヒカワか?」
「あ、そうそう!ごめん、ケータイ替えたの言ってなかったね」

同期入社で同じ課に配属されて最初の3年をずっと一緒に過ごした、思い入れの深い同期であるアサヒカワが、ついに結婚です・・・!
飄々とした性格、見た目によらずけっこうナンパ野郎で、自由人。
こーゆう男は35まではヨユウで独身だろう、と思っていたのに30歳きっかりで結婚ですかー。


つまんない!!!(笑)


うちの会社に同期入社したのは18人。内、女性は沢村1人のみ。
平均年齢現在30歳。
そして、現在未婚なのは沢村含めてたった3人となりました・・・


この業界、マジ結婚早すぎじゃね?!
25の時点で半分くらいはもう既婚だったからな!
最後の四天王、1人が崩れ去りました。

きっと、35まで独身なのは唯一の紅一点である私になることは、ほぼ確定ですな・・・(苦笑)

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雨が降らないから

彼女が手帳をめくりながら真剣に、でも明日の食事は何にする?というような軽い口調で喋る。
「ほら、この日なんてどう? 再来月の十五日」
「べつにどこでもいいけど、なんでその日?」
「ほら、あたしたちが付き合い始めた日付と一緒」
こじつけだな、と思ったがそこには突っ込まずに代替え案として別の日を提示する。
「それなら半年後の十日にしよーよ。俺たちが出会った日」
「うーん、それもいいけど・・・来年かぁ」
少しでも、執行猶予を伸ばしたい気持ちがあって言った日付は、彼女のお気に召さなかったみたい。
それにしても、まだ付き合い始めて三ヶ月。でも気付けば結婚の話がトントン拍子に進んでいる。
俺だって三十路だ。この年になって付き合い始める相手とは、そりゃ結婚だって視野に入れてたさ。
でも、流石にちょっと早すぎる気がする。
せめて一年。互いのバースデーを一緒に過ごしたぐらいからでも、遅くないんじゃないか?
それとも、そんな悠長な考えがもう既に婚期を逃した結果なんだろうか。
彼女の大きくまんまるい瞳がカレンダーの日付を追って、くるくる動く。
少しくせっ毛の片方だけ跳ねた髪。ふっくらとした白い二の腕が半袖のT-シャツから伸びて、その手は手帳をめくる。
女は見た目じゃないよ。
ましてや、結婚相手ともなると、性格が一番重要だろ。
でも、俺の好みの女って、この子とは真逆のタイプだったはずだ。
細身で、シャープな少し冷たい目をしていて、勝手にふたりの予定を推し進めたりしない、多少控えめな性格をしたような子。そんな子に憧れてたはずなのに。
でも、嬉しかったんだろうな。好意を持って貰えて。
「まぁ、キヌちゃんの好きな日にしなよ」
モヤモヤが消えないのはきっと、梅雨だというのにこの晴れて蒸し暑い空の所為だ。


・・・・・なんていう夢を見て、目が覚めました。(笑)
妙に心情がリアルだったよ!!!
そして私は何故かこのカレシ目線でした・・・。
ってか、夢の中では私は大抵性別は男です。
女であっても必ず「オレ」口調で喋ってます。
なんでしょうね、これ。
夢って、小さい頃の記憶とか、願望とかが反映されたりするんですか?するんでしたっけ?
小さい頃は、確かに私はほぼ男として過ごしてましたけど。
ってか18までそうでしたね。18の頃は制服も男物でしたから、髪型も坊主頭でしたから、どこいっても女に間違えられる(違)ことはありませんでした。
就職するときをきっかけに、戸籍上の性別で生活しないとイタイキャラになりそうだ、と思って持ち物総入れ替えして必死で女に化けたんですね。(笑)

だからかなー。

それにしても、雨が降らないのはユウウツですよ。
私の、一年で一番すきな季節・六月の梅雨だというのに。
雨大好きななのに、ここ神戸エリアではぜんぜん降らないんだから。

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あたしが持っていない、ごく普通の体験と思い出

今までの人生に悔いはないし、自分の人生をツマラナイと思ったこともない。
ましてや、自分のことを不幸せだとも思っていない。

けど。

あたしは世間一般の人が体験してきたであろう、ちいさな、くだらない、普通の思い出を、あまり持っていない。

喩えば、家族で食事をすること。
初詣や七五三、運動会、外食、テーマパーク、旅行、お出かけ。
家族で過ごした行事は、ひとつもない。

海水浴、キャンプ、卒業旅行や友人との旅行、合コン、ビアガーデン。
抱擁、頭を撫でられること、手を繋ぐこと。
誰かのいちばんになること。
恋人付き合い、愛あるセックス、家族の団欒。
これらは、体験したことがないもの。


今より、何かを求めることは、贅沢ですか。
もう、体験できないことも多い。
過ぎ去ってしまった時は、戻ってこないから。

自分の、家族が欲しかった。
血の繋がりなんてなくっていいから。
あたしを愛してくれているという確信が持てる、あたしだけの大人が欲しかった。
あたしをこの世でいちばんにしてくれる、子供が欲しかった。

感情は、何でつなぎとめればいいの?
気心の知れた「誰か」が、どれかひとつでも、一緒に体験してくれればいいのに。


いまのあたしが手に入れているものは、
ぐらぐらと揺らぐ不安定な正社員という肩書きと、
そこに働く学生ノリの愉快な仲間たちと、
意味のない紙っ切れの国家資格と、
洗面所無し、外置き洗濯場の文化住宅アパートくらい。

これで、じゅうぶんでしょ。
これで、じゅうぶんでしょ。

ひとは、無い物ねだりが得意だから。
ひとは、贅沢な生き物だから。
今以上に何かをほしがる。


奇跡なんて、この世には無いから。
──愛される日がいつか来るなんて思わない。

楽しい日々は、もう戻ってこないから。
──会社が無くなってしまったという事実は消えない。

いまを堅実に生きろ。
そうすれば、これ以上は手に入らなくても、これ以下に下がることを食い止めることは出来るかもしれない。

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