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りそうのせかい改

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AM4:00からPM6:00まで。

夜勤終わり。
翌日からの久々の二連休のため24時間マクドにて休日中のTO DO LISTを作って帰宅したら午前3時過ぎ。

こっからシャワー浴びて寝たら、どうせ昼過ぎに起きて、そしてまたヤル気なくして無駄な1日を過ごす事になるんだろうか・・・・・・

と思ったので、もうこのままやるか!!!ということで、家の大掃除にかかりました。
朝4時から、夕方6時まで。

36℃越えのクソ暑い部屋の中なんで、熱中症にならないようにめっちゃこまめに水分補給しながら、途中で食事や仮眠を取りながら、ひたすらやり続けました。
キッチン、シンク、コンロ台、風呂場の出窓、そこの網戸張替え、排水口の髪の毛受け、排水口の中、風呂場自体、寝室、ダイニング、洋室。

全部やんっ!

こんなに家中やるつもりなかったのに。月末に友人が泊まりに来ることが決まったため、それに向けて水回りだけやるつもりが。ほんまにぜんぶやってしまいました・・・。
掃除って、やりだすと止まりませんよね。ふー。疲れた。

休みやのに、仕事の日よりよく働いたぜ・・・!

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初体験の話をしたのは、あなたが初めて。

休日。
30度超えの涼しくならない部屋の中で、だらだらと過ごしてしまいました。
何をしてたかというと、主に少女漫画を読み漁ってました。

たまにういう日が来るんですよね。
こう、ガーっと一日漫画漬けになる日が。
正直、ネカフェに行ったほうが快適です。クーラー効いててドリンク飲み放題だし。
ウチはクーラーつけても30度よりは下がりませんから!
部屋の熱効率上げるために日中はカーテンぜんぶ締め切ってるんですが、全然ダメ。部屋が薄暗くなるだけ。
遮光カーテンにでもしないと、あまり意味ないのかも・・・と思い、以前買ったんですが、サイズが合ってなかったのと、何故か2枚組みのうちの1枚しか買ってなくて微妙に使い物にならなくて、結局いまはフツーのやつを付け替えてます。
看護師の同居人が置いていったカーテンをね・・・。

読み漁ってた少女漫画は実にいろいろあるんですが、最後に読んだやつが完結してたし、テーマもすごい考えさせられてよかった。
「リミテッド・ラヴァーズ」(著 山田圭子)ってやつで、女子高生と駆け出しの担当医師の紆余曲折を経た恋愛を主軸にした、夢に向かってたくましく生きる人々の成長記。
主人公の少女はしょっぱなから軽い事故なのに半身不随になり車椅子生活を余儀なくされます。でも、この物語は「車椅子の少女」の物語ではないです。それぞれの人物が、自分の抱えてるトラウマだとかコンプレックスだとかを乗り越えて、本当の友情や愛情や夢や希望を取り戻していく物語なのですね。
主人公の少女は勝気で暗い部分もあるけど結構元気娘で、あまり車椅子の不自由さを感じさせません。でも、些細なことで足が動かないことが足枷になる部分もちゃんと描かれていて、綺麗事だけ並べた物語でないことも読み取れます。


で、全然関係ないのにふと、あることを思い出しました。

ずっと、誰かに聞いて欲しい。誰でもいいから吐き出してしまいたい。
そう思っているような体験って、だれでも1つや2つ、あると思います。
でもこれを言ってしまったらこの人は自分を偏見の目で見るようになるんじゃないか?とか、哀れまれたり同情されてしまうんじゃないか?ってことを恐れて、結局誰にも言えなくて、胸のうちに溜め込んでもやもやしてしまったり・・・。
普段は忘れてしまっているけれど、言う必要も無いけれど、誰かに聞いて貰えたら、楽になれるかもしれないのに。
そういう話が、私にもいくつかありまして。

そんな話を、最近は偏見や、同情や、哀れみや、好奇心なんかでもなく、「私」のはなしとして、ふつうに聞いてくれるひとがいるのです。
リラックスして家のソファーに座って、TVの漫才師に突っ込むようなノリで私の話に大阪弁で相槌を打って。

喩えば、初体験の人の話。
ちょっと変わった初体験をした私は、そういう話題になったときに「相手はカレシじゃなかった」とは言いますが、それを言ったらやっぱり気まずいと言うか聞いたらマズイと思われるのか、さらに追求してくる人もいなかったので、誰にも話したことはありませんでした。

今になって話す気になったのは、たぶん10年以上が過ぎて時効の気持ちが出てきたせいかもしれません。
でも、聞き手が、聞き上手の彼だったからだと思います。

あれは、19の頃。
バイト先の後輩で4,5こ年上の年配大学生だった男の子がその人物でした。
彼は外面が良くて店長やパートさんからの信頼は絶大だったけれど、私はいち早くその人の陰の部分を見抜いていて、それを疎ましく思っていました。
兄弟の末っ子で、地元有名高校を出ておきながら一旦は就職して3年お金を貯めて、それから大学に入学したという経歴も、大人たちから見れば「偉いわねぇ」と好感度を上げる材料のひとつでしかない。
でも私は、彼が地元のチンピラから打ち子の仕事を貰ったり、雀荘で代打の依頼を受けたりするような闇の世界に片足突っ込んでいる人物だと知っていました。
そんな彼がターゲットに目を付けたのが私だったのです。
彼は異常に「19歳、処女」の肩書きに執着していて、もちろん私のことなんか見ていないし、何か理由がありそうでした。彼の言い訳の常套句が「今でも好きな別れた元カノが当時19歳だったから」というもの。
つまり19歳じゃなくなったらもう私に興味なんて無くなるんでしょ。という冷めた考えが直ぐに浮かぶようなセリフを言う男だったので、そんなくだらないことに付き合っている暇はない。と割り切っていたのですが。
あるとき、知ってしまったのです。
そいつがまだ童貞やった19歳のとき。旅行先の都会で事件に巻き込まれ拉致監禁され、ホモ野郎に掘られたことを。
それを言った彼は、本音をぶつけてきました。

「ホモなんてみんなエイズに感染してんやら?! 俺もどーせエイズなんや。俺の人生に先なんかあらへん! 世の中に仕返ししてやるんや! 19歳の処女の子ぉーとヤりまくって、みんなエイズに感染したらええ!」

「・・・そんなこと、ホンマに思ってんやったら、あんたはアホで愚かや。ひとつ、約束してくれたらあんたに処女上げてもええわ。ウチがお前のその妄想に付き合ったるさかい、ウチで最後の女にせぇ。それで、セックス終わったら一緒に病院の検診受けに行くこと!!」

これが、私の真実の初体験の物語。
この後本当にセックスして、反応が出る期間を経てからふたり別々だけども病院で検査を受け、彼は感染してなかったことを証明出来たのでした。

私は、彼をネガティブ思考と感染の恐怖の淵から救えたかもしれません。恋は、なかったけれど。

そんな話を30になって初めてしました。
何気ない会話の流れで、「あ、そーいえば」という感じで。

トラくんは気まずい空気なんかを持ってくることなく「初Hで身体張りすぎやろっ!!」とふつうに突っ込んで「で、結果は陽性やなかったんやろ?」とふつうに返してきました。
「もちろん。だから今こうしておるんやん?」て笑ったけれど。
あんた、すごいなぁ。こんな話聞いて、引かずに居られて、同情とかやない、ふつうのコメント出せるなんて。
そういえば、こないだの時もそうや。
幼少期の親の話やこの声のこと。聞いても全然ふつうやった。
と、驚いて感心してたら彼はケロッとした顔で答えたのでした。
「だって沢村さんが、ふつうやから。別に不幸そうな顔してへんやん?」
・・・そっか。
なるほど。納得。でも、それって、すごい。

だいたい、ふつうの人はこんな話題が始まったら「ゴメン、重い話はちょっと・・・」とか言って避けたり「そっか・・・苦労したんだね」と同情しだしたり「苦労自慢出たよー」と敢えて茶化したりするんだけど、そのどれにも当てはまらない反応をするひとが居たなんて。

トラオは、私の家のソファーに座ってチューハイを飲みながら、何気ない日常の話をする時と同じノリと表情で私の話を最後までちゃんと聞いてくれる。

それで、頭に触れることなく「ええからこっち来て隣座ってぇや。寂しいやん?」と笑うんです。
・・・彼が、頭に触れない理由が、私の思っている意図と同じかどうかは判らないけれど。
触れないことが、同情でも愛情でもないことを物語っているようで、私はひどく居心地がいいのですよ。

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お父さんかお母さん、いらっしゃるかな?

て言われました。
新聞勧誘のおっさんに。

・・・もう30越えてんですけど・・・。

一人暮らしってバレたら嫌なんでふつうに
「いません。」
て答えましたが。

後から考えたら
「新聞は旦那に相談してみないと・・・」
とか、奥様っぽいコメント返してやればよかった。

ってか、いくつになっても「家主じゃないひとに話してもしょうがない、ご両親出せ」みたいな感覚で「お父さんかお母さん、いらっしゃる?」て聞いたのか??

この年になって「両親出せ」て言われる日が来るとは、びっくりです。
謎・・・・・・

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人にやさしくすると、穏やかな気持ちになれる。

社内審査、半月前を切りました。
今から勉強始めて間に合うのか? 否。そんな付け焼刃の知識なんて無いも同然でしょ・・・。
こういうの、なんていうか知ってますよ。
そう、悪あがきって言うんです。


7月入ってもう夏なイメージなのに、まだ梅雨が明けてないので私的には気分向上中です。
しとしとと降る雨の中、長靴を履いて出かけるもよし、また家の中で静かに過ごすもよし。
風流さ? 侘びさび的精神? それもあるけど何よりもいいのは少し涼しくなること!
あと、いつもより周りが静かに感じる。(たぶん実際に外で遊ぶ子供とかいないし・・・)
そして、紫外線が弱まってる気がする!!

暑いの超苦手で、おまけに紫外線アレルギー持ってるから(軽度だけど)カンカン照りの日に外出るなんてありえません・・・。



そんな雨の日はもちろんそうですが、最近は穏やかでやさしい気持ちです。
 毎日自炊して、こまめに掃除して、日々をキチンと生きてる気がします。
先日は半年間もご無沙汰してたジムにも行ってきたし。健康にも多少気を使ってる感じ。

水面下の激しい気持ちに振り回された6月を経ていまがあるなら、とってもいい時間をすごせました。
自分の感情の、いろいろなことにきちんと向き合えた一ヶ月。

・・・思い返せば、7年前も、4年前も、2年前も、今も、私の恋の季節は6月でした。
それも、ぜんぶ6月下旬。
これって偶然? それとも必然??
どれもいわゆる「いい結果」ではないけれど、どれも私にとっては穏やかな気持ちを取り戻せた日です。




キミがくれたものは、形には出来ないけれど、また一歩私を成長させてくれましたよ。
たぶんキミにも成長できる何かがあったはず。
そばにいて、成長できる何かがあって、尊敬できる何かを持っていて、こころを裸にしても苦痛じゃない相手と出会えたことは、何よりの財産。
恋なんて幻想が手に入らなくても、キミに出会えてよかった。

相手の気持ちを想像すること。汲み取って、望む言葉を選んであげること。
喩えそれがちいさな出来事であっても、勇気を出してくれた行動にやさしい言葉で返せば、思いやりが包まれた返事が返ってくること。




考え方ひとつ、選ぶ言葉のひとつ、行動ひとつでこんなに世界が変わって見えるんなら、多少無理矢理なポジティブシンキングができることはいい特技だと思います。

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不誠実な誠実と、気まぐれ迷い猫

深夜二十三時半を回った頃。
 呼び鈴が鳴って玄関のドアを開けると、シロがいた。
「どーしたん?」
「・・・近所、通ったから。」
 どことなく気まずそうに、少し離れて立っている彼に蛇目さんは、まぁ上がりーや。と言って奥へはけた。



 おずおずと背を丸めて上がった割りに、シロは我が物顔でソファーに寝転びスマートフォンを弄りだす。そんな彼を気にした様子もなく蛇目さんは「ジャスミン茶でいい?」と言って戸棚からガラスのコップをふたつ取り出す。
「仕事帰り?」
「もちろんです。あ、でもさっきまで友達と飲んでたんですよ。ほら、こないだの」
「あー、クロくんだっけ?」
「そう。彼。」
「仲いいねー。ハイ、お茶。」
「あ、ドウモ。」
 態度は横暴だけれど、言葉はいちいち謙虚なところが面白いな、と蛇目さんは内心思う。そしてソファーからいちばん離れた位置に座布団を置いてちょこん、と座りコップに口をつける。
 他愛ない雑談。今日あった事、職場の先輩の話、最近ハマってる音楽のこと。
 ぽつぽつとだけど、途切れないように意識して喋っているみたいにふたりは言葉を紡ぐ。中身のない会話。やがて、待ってましたとばかりに沈黙が訪れた。
「・・・何か、喋ってや」
 痺れを切らしたように蛇目さんが言った。
「喋ってますやん!そっちこそ喋ってぇや!」
「──だったら言うけど。あんた、何しに来たん?」
 こんな夜中に。という意味ではないことは、シロも解っていた。蛇目さんは、さっきから話題に出さないように避けている、あの事を言っているのだ。
「蛇目サンに、会いに来たんですよ。・・・メール、貰ったから。」
「フーン・・・」
 今日、二十日ぶりに蛇目さんから連絡が来た。それも、信じられないくらい長い長文で、赤裸々に自分の気持ちを綴った文章が。勝手に連絡を絶っておいて、もう連絡してくんな、とまで言っておいて、今度は反省と後悔の文。挙句の果てに、もう一度出会ったとこからやり直したい、ときたもんだ。
 そこまで書いておいて、当の蛇目さん本人は薄い声で相槌とも取れない返答をしただけ。
「フーン、じゃないでしょ?! てか何やねん、あのメール!! ちょいちょい重いねん!!」
「はぁ?! どこが?!!! 超正直に気持ち書いてるだけやんっ!」
「蛇目さんってさぁ・・・!」
 言いかけて、言葉を飲み込む。
 この疑問を口にしてしまえば、何かが変わってしまうかもしれない。いや、何かは絶対に変わってしまう。それが、いい方に転ぶか、悪い方に転ぶか。蓋を開けてみないと、自分でも予想がつかない。
 そう、思ったけれど。シロは、意を決したように言った。
「・・・僕と、付き合いたいって思ってるでしょ。」
 視線がぶつかる。
 蛇目さんの表情には特に変化がなく、感情が読み取れない。シロは、出来るだけ、感情の篭らない眸を作った。さぁ、なんて答える? どっちに転ぶ? 考えうる回答のパターンを思い描いて、喉元に返答を準備する。
 暫しの沈黙のあと。蛇目さんが、口を開く。
「いや、まったく。」
  拍子抜けした。
 意を決したセリフは、宙に宙ぶらりんだ。シロは顔を上げた。蛇目さんは特にこれといった感情もないような、平然とした表情をしていた。
「そ、そーなの?」
「だっていま特に恋人欲しくないし。結婚願望もないし。年齢的に、いま恋人作ったら結婚について考えんとあかんくなるやん。そーゆう煩わしいのキライ」
 三十路超えの女の口から飛び出たとは思えないような、いい加減な発想。予想の遥か斜め上を行く回答に、シロは面食らって思うように口も動かなかった。
「自由人、なんですね・・・」
「それを言うなら、あんたもやろ!」
「まぁ、そうか。僕も付き合うつもりやったわけやないから、それならええねん」
  それならええねん。心の中で反芻する。それならええねん。
 蛇目さんは憑きもんが降りたようなさっぱりした顔で喋りだす。
「あんたに恋愛感情なかったなら安心したわ。うちかてあの日、ジブンのことめっちゃ傷付けてしもた思って焦ったからな」
「・・・なんか重たい文章のメール来たから告白られたらどーしようか思って。それで断ったらまたギクシャクするん嫌やったし・・・」
「ま、付き合う付き合わへんは置いといて。お前がうちのこと好きなんは分かったから、それでええやん」
「何ですか、それ。えらい自信ですね。」
 シロは嫌味のつもりで言った。けど、蛇目さんはにこにこ、いや、むしろ、ニヤニヤ笑っている。
 何でこの人はへこたれないのだ。これだけ、心無い言葉をぶつけているというのに。
 蛇目さんはそのニヤニヤの表情でシロに向かって言った。
「だって自分、今日メール見てすぐ家来たやん。うちと仲直りしたかったんやろ?」
 自信に溢れた目で見つめられると、ノーとは言えなくなってしまった。
 実際シロは、二週間以上の音信不通の間もやもやしていた。偶然テレビで映し出された蛇目さんの職場のレポート番組を見た。隣町の行きつけの店に行ったとき、彼女の通っていると言っていたジムを覗いたこともあった。忘れていたわけではなかった。いや。むしろ、ずっと気になっていた。
「まぁ、そーですね」
「それと同じくらい、うちもシロのことは好きやで」
「恋愛感情やなくて?」
「今はね。恋愛感情が芽生えたらまた言うわ。うちは何でも正直にぶちまけるタイプやから。最初からそうやったやろ?」
 言われてみれば、そうだったかもしれない。
 最初から、蛇目さんは自分の思ったことはなんでも口にしていた。でも、あの時、その言葉の意味をそのまま捉えられなくて、何かきっと裏にウラハラな感情を隠しているんだ、と思っていた。
「あれにも裏なんかなかったんや・・・。なんや、深読みして損した・・・」
 一気に気が緩んだ。
 でも笑う気になれないのは、恋という感情を向けられていなかったことが、案外ショックだったのかもしれない。我ながら自分勝手だな、と思う。自分だって、愛の告白を受けた場合の選択肢はお断りコースだった癖に。
「最近、昔の曲聴くのにハマってるんですよ。なんか聴きませんか?」
 シロはiPodのイヤホンを抜いて、アルバムタイトルをめくった。
「じゃあオススメの曲聴かして。うち、ミュージックポット持ってるんよ」
 言いながら蛇目さんは立ち上がり、棚の上のマグカップ型スピーカーに手を伸ばす。少し背伸びした拍子に、ふわりとしたミニスカートの裾から白っぽい布が視界を掠める。シロは、そんな些細なことですぐ反応してしまう自分の身体を恨んだ。
 受け取ったスピーカーにiPodをセットする。少しざらついた音で、90年代のコアロックが流れ始める。
「白? 可愛い下着つけてますね」
 邪な気持ちが過ぎったことなんて、彼女が振り返ったらどうせバレてしまうんだ。だったら隠したって無駄だとシロは開き直った。
「違うよー。ホラ」
 蛇目さんは襟首をめくって見せた。少しだけ胸元がはだけて、水色に淡いピンクのレースがついたブラジャーが覗く。蛇目さんはそれを、天気の話でもするかのような自然な流れでしたのだから敵わない。手を伸ばせばすぐ届く距離に彼女はいるのに、いまは絶対に手に入らないものがある。
「コラ、」
 伸ばした手はぴしゃりと払われてしまった。
「えぇやん。おっぱいだけやから。触らしてぇや」
「何でやねんっ。ハイ、て言うと思ったんか?!」
「いやぁ、今日は甘えさしてくれるかなぁ思ったから。じゃあなんか言うこと聞きますよ。僕にして欲しいことありませんか?」
「してほしいこと? なんでもいいの?」
「はい」
「じゃあ、セックスかな。」
 また予想のはるか斜め上をいく回答に絶句してしまう。
「いや・・・それはあの・・今日は準備が万全じゃありませんので・・・」
「? 準備って何やねん。お前は女子か」
「ゴム持ってませんので!」
「あー、そういうことね。残念~」
 本当に残念になんて思ってないくせに。
 蛇目さんの言葉はぜんぶ真実だというけれど、ぜんぶが嘘くさい。からかわれているように思ってしまう。だって、声に感情がぜんぜん乗ってない気がするから。
「・・・喩えばもし、セックスしてしまったら、僕らはどうなるんですか。」
 いま。本当にする気はないけれど、このひとと一緒にいたらいつかきっとしてしまう気がする。だって自分は中学生並みのエロガキな下半身の持ち主だし、彼女はそれを特に否定もしない。
「別に、どうもならんのじゃない? その行為自体に意味なんて持たせる必要はないやろ。身体を重ねた後に心情が変化することはあるかもしれんけど」
「心情の変化って、どう変化するんですか」
「そんなこと、その時になって見ぃひんと判らへんよ。変わらへんかもしれんし、あんたのこと好きになるかもしれんし」
「僕は、そうはなりませんよ。絶対」
 恐かった。そうなったとき、いまの軽口叩ける関係が崩れてしまうのが。蛇目さんとの縁が、切れてしまうのが。
「そうしたら、その時にまた考えればええやん。お互いええ年した大人なんやから、そのへん分かってるなら、したらええと思うよ」
 だから嫌なんですよ。その時、が来てしまったら、もう元には戻れなくなってしまうんでしょ。シロはそう言いたかったが、止めておいた。自分が、手を出さなければ済む話だ。たぶん、蛇目さんは自らシロを誘惑してくることは有り得ない。だって、恋人関係を結んでいないんだから。
 ぶっ飛んだ意見を言う人だけれど、そういうところは妙に誠実を守るひとなのをシロは知っていた。
「・・・判りました。じゃあとりあえず、おっぱい触らしてくださいよ。僕の触っていいですから」
「ぜったい嫌。うちは別に触りたくないし」
「ちょっとだけ。先っちょだけでいいから」
「あんた、ただのスケベオヤジやな」
「・・・そんな僕が作る作品を、あなたは好きなんですよ」
 出会ったとき、アーティスト・寅雄の作品を蛇目さんは好きだと言った。決して上手ではないけれど、あたしの心には響いたし、こういう毛色の作品は元々好きなジャンルなんだ、と言ってくれた。
 蛇目さんは相変わらずケロっとした顔で答える。
「あたしの中で寅雄くんとシロは別人やから。ちゃんと分けて考えてるから大丈夫。」
「ほんならシロはただの変態やんっ!」
「そーいうことになるな」
「・・・あなたが、女性だったのが悪いんですよ」
「そんなこと、うちかてずっと思ってたわ。同性やったら、良かったのにね」
 ミュージックマグからは最近エンドレスで聞いているロックが流れていた。
 その唄は、時の流れの早さと短い時間の大切さを唄っていた。

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